圏論を勉強するための本(Basic)

 今回は圏論を学ぶための文献についてまとめようと思います。初めて圏論を学ぶ方や読んだことない本の特徴を知って頂ければ幸いです。

 

1 ベーシック圏論(T.レンスター)

 よくベシ圏と呼ばれている本ですね。私は2回生の夏に初めてこの本で圏論を学び始めました。その頃は圏論以外の知識があまりなかったので例を追うのが大変だった記憶があります。また、spm19thの圏論班でこの本を読みました。spmでは論理学に詳しい先輩がいらっしゃったので色々な視点から圏論を学べてとても勉強になりました。(進捗部屋で米田の補題示して図式が可換になるたびに拍手してたのも懐かしいです笑)

1章は普遍性の例から始まり圏や関手、自然変換などの基本的な概念を定義する。

2章は随伴を3通りの定式化で説明し、その同値性を証明する。

3章は基礎論の立場から見た圏論の説明。

4章は米田の補題の証明。

5章は極限と余極限の説明。

6章は随伴や極限、余極限の相互作用などについての説明。

付録は一般随伴定理の証明。

という形で書かれています。

この本を読めば基本的な圏論を学んだと言っても良いかもしれません。私が読んだ圏論の本の中で米田の補題についてはこの本の説明が1番良いと思います。

 

2 圏論の基礎(S.マックレーン)

 原著がCategories for the Working MathematicianなのでよくCWMと呼ばれている本ですね。この本は3回生の春頃にKan拡張を知りたいなぁいうことで先輩と読もうとしてた本です。(結局ゼミは他の文献でやりました)

この本はモナドやアーベル圏、エンド、Kan拡張、モノイダル圏、2圏などベーシック圏論と比べるとより進んだ内容が書かれています。また、随伴の例が分かりやすく表でまとめられてて良いと思います。局所化など書かれていないこともありますが、ほとんどの圏論で使うことは学べると思います。私はこの本を通読するのではなく、気になるトピックごとに読んでいるので7割くらいは目を通しましたがまだまだ学べるところがたくさんあります。

 

3 圏論(Ateve Awodey)

 この本は3回生の初めに先輩が圏論ゼミをしたいということで原著でセミナーをして、私はそのチューターをさせてもらいました。和訳と見比べながらゼミを進めましたが、和訳は本当にひどいので原著を読むことを強く勧めます。

この本の特徴は全体的にロジックによっているところだと思います。私はロジックにあまり詳しくないのでゼミ以外で読み進めていませんが、興味のある人は読んでみると良いと思います。

 

4 圏論の歩き方(圏論の歩き方委員会)

 この本は圏論と他分野との繋がりについて学べる本です。章ごとに話が独立しているので読み始めやすいとは思いますが、どの章も丁寧に証明されているわけではないので全てを理解するのは難しいと思います。私は10章の双対性の話に興味があったので、そこから論文などを調べ、勉強を始めました。(今も空間の圏と代数の圏の双対随伴について考察を続けています。)

 

5 圏論の道案内(西郷甲矢人・能美十三)

 この本は対話形式で圏論について説明されています。割と新しい本で私はパラパラとしか読んでないですが、たしかモナドの定義が間違っていたような気がします。

 

6 Category Theory in Context (Emily Riehl)

 この本はspm19thでもう1つの圏論班が読んでいました。わかりやすく、例も豊富で、誤植も少なくお気に入りの本です。ある程度数学に慣れている人にはこの本をお勧めしたいです。

この本は基本的な圏や関手、自然変換の説明から具体例をたくさんあげながらKan拡張まで書かれています。手元に置いておいて損ない一冊だと思います。

 

Handbook of Categorical Algebra (Francis Borceux)

 この本はHoCAと呼ばれている本ですね。いつも私は辞書がわりに使っています。これをすべて読む人は本当に圏論の研究者とかなのかなぁとか思ってます。でもとても良い本です。

 

8 Categories and Sheaves (Kasiwara・Schapira)

 この本は3回生の初めから後輩とゼミで読みました。丸1年読みましたが、1章の終わりまで読み進められました。7章のLocalizationや8章のAdditive and Abelian Categoriesをぱらぱらと読んだのですが読みやすく面白かったです。

 

9 壱大整域 (http://alg-d.com/math/kan_extension/)

 とてもわかりやすく誤植も書き間違え程度でほとんどないとても良いサイトです。1番お世話になっているかもしれません笑

 

9個ほど圏論の文献を紹介しましたが、ベーシック圏論と壱大整域を並べて読むのが1番良いかなと思います。また数学に少し慣れている方はCategory Theory in Contextと壱大整域を並べて読むと良いと思います。

この記事では基本的な圏論の文献を紹介したので次回は進んだ内容の文献を紹介したいと思います。

 

次回の月1圏論ゼミは4月25日の予定なのでお時間ある方は是非!