アーベル圏における蛇の補題とコホモロジー長完全列

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 今回はちょーさん(@kyo_math1729)と共著でアーベル圏における蛇の補題コホモロジー長完全列に関するpdfを作りました。

 

 ちょーさんが蛇の補題をFactとしたコホモロジー長完全列のpdfを書いていたので私がアーベル圏の基本的な性質と蛇の補題についてまとめるので共著にしませんか?と話を持ち掛けました。

 

 アーベル圏の議論はミッチェルの埋め込み定理により元を取って議論できますが今回はそうではなく普遍性による議論をしています。

 

 マイヤービートリス完全列なども気になっているのでその辺も時間があるときに勉強したいなと思います。

 

 いつもお世話になりすぎているとても優秀な先輩と共著でpdfを作れて幸せです。

 

 次回の月1圏論ゼミは5月23日の予定なのでお時間ある方は是非!

またzoom圏論ゼミを立ち上げたので興味のある方は気軽に連絡ください!

圏論を勉強するための本(Advance)

 前回に続いて圏論の文献についてまとめようと思います。今回は前回とは違い少し踏み込んだ圏論の文献を紹介します。

 

 加法圏論、アーベル圏論

1層とホモロジー代数(志甫 淳)

 よく層ホモと呼ばれている本ですね。この本は加群論から始まりホモロジー代数を勉強できる本です。私は2回生の時に後輩とこの本でゼミをしました。その時は確かFive Lemmaあたりまでで終わってしまった気がします。それから1人で加法圏とアーベル圏のところを読み進めました。ミッチェルの埋め込み定理まで示し終えて一区切りしました。この本を参考にしたブログもあるので興味があったら参考にしてください。

ibu8128.hatenablog.com

 

2 圏論の技法(中岡 宏行)

 この本は初歩的な圏論から始まり加法圏、アーベル圏、三角圏、導来圏などとホモロジー代数を学べる本です。付録程度に豊穣圏のことも書いてあります。私は(プレ)加法圏の議論をこの本で勉強しました。環は1点プレ加法圏とみなせるので環論とほとんど同様なことが(プレ)加法圏で議論できることを学びました。また、圏の局所化や三角圏の勉強の際にも参考にしています。

 

Categories and Sheaves (Kasiwara・Schapira)

 Basicにもあげましたが、この本は圏の局所化、加法圏、アーベル圏のことを勉強できます。(この本はもっと先の議論があるのですが私はそこまで読み進められていません…)

インド化、三角圏、導来圏、層、グロタンディーク位相など様々なことが書かれています。

 

 三角圏論

Triangulated Categories(Amnon Neeman)

 私はこの本と圏論の技法を並べながら三角圏の勉強をしています。卒業研究にも関わってきそうなので頑張って読み進めていきたいです。

 

 豊穣圏論

1 Basic Concepts of Enriched Category Theory(G.M. Kelly)

www.tac.mta.ca

 私はこのpdfと壱大整域を並べながら豊穣圏の勉強をしました。環や前順序集合や距離空間を豊穣圏とみなせるのはとても面白いと感じました。

 

 2圏論

1 2-Dimensional Categories(Niles Johnson Donald Yau)

https://arxiv.org/pdf/2002.06055.pdf

これが良いらしいけど読んだことはないです。私は壱大整域で2圏の勉強をしました。

 

 モデル圏論

1 Model categories(Mark Hovey)

 私はこの本と壱大整域でモデル圏の勉強をしています。この本は誤植表と一緒に読まないと初めの方に誤植があるので混乱してしまいます。専門が多分深くモデル圏に関わるので頑張って読み進めていきたいです。

 

 ∞圏論

1 Higher Topos Theory(Jacob Lurie)

www.math.ias.edu

 よくHTTと呼ばれている本ですね。だいぶ分厚い本ですが頑張って読んでいきたいです。

 

2 Higher Categories and Homotopical Algebra(DENIS-CHARLES CISINSKI)

 読んだことはないですが代トポと∞圏について書かれているものもあるようです。評判は良いみたいなので時間のある時に読んでみたいです。

 

人には人の圏論ということで色々な圏論の文献を紹介してみました。

次回の月1圏論ゼミは4月25日の予定なのでお時間ある方は是非!(Skypeなどでやるかもしれません)

圏論を勉強するための本(Basic)

 今回は圏論を学ぶための文献についてまとめようと思います。初めて圏論を学ぶ方や読んだことない本の特徴を知って頂ければ幸いです。

 

1 ベーシック圏論(T.レンスター)

 よくベシ圏と呼ばれている本ですね。私は2回生の夏に初めてこの本で圏論を学び始めました。その頃は圏論以外の知識があまりなかったので例を追うのが大変だった記憶があります。また、spm19thの圏論班でこの本を読みました。spmでは論理学に詳しい先輩がいらっしゃったので色々な視点から圏論を学べてとても勉強になりました。(進捗部屋で米田の補題示して図式が可換になるたびに拍手してたのも懐かしいです笑)

1章は普遍性の例から始まり圏や関手、自然変換などの基本的な概念を定義する。

2章は随伴を3通りの定式化で説明し、その同値性を証明する。

3章は基礎論の立場から見た圏論の説明。

4章は米田の補題の証明。

5章は極限と余極限の説明。

6章は随伴や極限、余極限の相互作用などについての説明。

付録は一般随伴定理の証明。

という形で書かれています。

この本を読めば基本的な圏論を学んだと言っても良いかもしれません。私が読んだ圏論の本の中で米田の補題についてはこの本の説明が1番良いと思います。

 

2 圏論の基礎(S.マックレーン)

 原著がCategories for the Working MathematicianなのでよくCWMと呼ばれている本ですね。この本は3回生の春頃にKan拡張を知りたいなぁいうことで先輩と読もうとしてた本です。(結局ゼミは他の文献でやりました)

この本はモナドやアーベル圏、エンド、Kan拡張、モノイダル圏、2圏などベーシック圏論と比べるとより進んだ内容が書かれています。また、随伴の例が分かりやすく表でまとめられてて良いと思います。局所化など書かれていないこともありますが、ほとんどの圏論で使うことは学べると思います。私はこの本を通読するのではなく、気になるトピックごとに読んでいるので7割くらいは目を通しましたがまだまだ学べるところがたくさんあります。

 

3 圏論(Ateve Awodey)

 この本は3回生の初めに先輩が圏論ゼミをしたいということで原著でセミナーをして、私はそのチューターをさせてもらいました。和訳と見比べながらゼミを進めましたが、和訳は本当にひどいので原著を読むことを強く勧めます。

この本の特徴は全体的にロジックによっているところだと思います。私はロジックにあまり詳しくないのでゼミ以外で読み進めていませんが、興味のある人は読んでみると良いと思います。

 

4 圏論の歩き方(圏論の歩き方委員会)

 この本は圏論と他分野との繋がりについて学べる本です。章ごとに話が独立しているので読み始めやすいとは思いますが、どの章も丁寧に証明されているわけではないので全てを理解するのは難しいと思います。私は10章の双対性の話に興味があったので、そこから論文などを調べ、勉強を始めました。(今も空間の圏と代数の圏の双対随伴について考察を続けています。)

 

5 圏論の道案内(西郷甲矢人・能美十三)

 この本は対話形式で圏論について説明されています。割と新しい本で私はパラパラとしか読んでないですが、たしかモナドの定義が間違っていたような気がします。

 

6 Category Theory in Context (Emily Riehl)

 この本はspm19thでもう1つの圏論班が読んでいました。わかりやすく、例も豊富で、誤植も少なくお気に入りの本です。ある程度数学に慣れている人にはこの本をお勧めしたいです。

この本は基本的な圏や関手、自然変換の説明から具体例をたくさんあげながらKan拡張まで書かれています。手元に置いておいて損ない一冊だと思います。

 

Handbook of Categorical Algebra (Francis Borceux)

 この本はHoCAと呼ばれている本ですね。いつも私は辞書がわりに使っています。これをすべて読む人は本当に圏論の研究者とかなのかなぁとか思ってます。でもとても良い本です。

 

8 Categories and Sheaves (Kasiwara・Schapira)

 この本は3回生の初めから後輩とゼミで読みました。丸1年読みましたが、1章の終わりまで読み進められました。7章のLocalizationや8章のAdditive and Abelian Categoriesをぱらぱらと読んだのですが読みやすく面白かったです。

 

9 壱大整域 (http://alg-d.com/math/kan_extension/)

 とてもわかりやすく誤植も書き間違え程度でほとんどないとても良いサイトです。1番お世話になっているかもしれません笑

 

9個ほど圏論の文献を紹介しましたが、ベーシック圏論と壱大整域を並べて読むのが1番良いかなと思います。また数学に少し慣れている方はCategory Theory in Contextと壱大整域を並べて読むと良いと思います。

この記事では基本的な圏論の文献を紹介したので次回は進んだ内容の文献を紹介したいと思います。

 

次回の月1圏論ゼミは4月25日の予定なのでお時間ある方は是非!

広がりゆくトポロジーの世界ー言語としてのホモトピー論ー

 今回は玉木先生の広がりゆくトポロジーの世界ー言語としてのホモトピー論ーという本を読んだので章ごとに簡単に感想を述べていこうと思う。

 

1.トポロジーとは何か?

 題通り新しいトポロジー像を考え直すというところから話がはじまる。

複体はポセットとして扱われ、逆にポセットから順序複体が構成できる。これについては10章で圏と関手を用いて書かれている。実際2つの関手が作れ、互いに逆ではないが良い関係があるらしい。また、後者の関手は小圏から分類空間を構成する方法の特別な場合らしい(△→Catに沿った△→Topの左Kan拡張らしい)。

ホモトピーを統一的に扱うためにモデル圏が使われるため、大雑把に言うとホモトピー論とはモデル圏の研究である(今読んでいる西田さんのホモトピー論にはホモトピー論とはHo(Top)の研究と書かれていたりします)。モデル圏は6章で少し詳しく解説されている。

ホモトピー論が研究されていく過程でオペラッドという数理物理などで使われる重要な概念が生まれた。起源は多重ループ空間の積らしい。オペラッドや多重ループ空間は8章で少し詳しく解説されている。

 

2.ホモロジーのアイデア

 この章は多方面からのホモロジーの解釈について説明されている。 ホモロジーやこホモロジーには

多様体微分形式など幾何学的構造により定義される不変量

・単体的複体の組み合せ論的構造により定義された不変量

・Eilenberg-Steenrodの公理系を満たすモデル圏上の関手と自然変換の列

多様体コボルディズムを用いて定義される位相空間の不変量

スペクトラムにより表現される関手

・モデル圏上の線型関手

・アーベル化関手の導来関手

など様々な見方がある。

Poincareのアイデアから始まり、様々なホモロジーについて書いてありとても面白かった。

 

3.ファイバー束とホモトピー

 メビウスの帯がS^1のファイバー束であることやその構造群が位数2の巡回群であることなど分かりやすい例を用いてファイバー束が説明されてる。とても興味深かったので参考文献のSteenrodの本を図書館で借りてきた。私の卒研のゼミはブラウンの表現定理を示すことを目標にHatcherを読むことになりそうでこの定理により、ファイバー束が分類できるらしいので関係ありそう。

 

4.分類空間について

 分類空間は位相群Gに対し主G束を分類することができる。分類空間の定義は様々な数学者により一般化されているらしい。この章はMilnorやMilgramによる位相群の分類空間の構成から始まり、小圏の分類空間が考えられることや群を対象1つで射が同型射のみの圏と見なして分類空間を考えることとMilgramの構成が一致することが書いてある。分類空間には元々興味があったのでとても面白かった。

 

5.関手の微積

 この章は数ヶ月前にベーシック圏論を読んでいるとき、一度読んだことがある。ベーシック圏論では稠密性定理(任意の前層は表現可能関手の余極限でかけるという主張)のアナロジーとして関手の微積分が挙げられており、そのときに読んだ。ちなみに稠密性定理は要素の圏で証明したり、米田埋め込みの米田埋め込みに沿った各点Kan拡張を計算することでも証明できる。

関数が微分でき、テイラー展開できることを関手に拡張しようということを目標にそれに必要なホモトピー極限などについて書かれている。 極限はホモトピー同値と相性がよくないため、ホモトピー極限ができたらしい。

 

6.何でもモデル圏

 位相空間の圏や単体的集合の圏がモデル圏になることや複素多様体の圏をモデル圏に埋め込むなど例を挙げながらモデル圏について書かれてる。最後の例は微分空間の圏はモデル圏で多様体の圏を埋め込めるんだけどそれと同じような話かな? Hovey読みたくなってまた図書館で借りてきた。

モデル圏の日本語の文献は知らないので今pdfを書いてるけど頑張っていきたい。

 

7.並列処理とホモトピー

 画像認識とか現実的な問題でもトポロジーが使われてて凄いなと感じた。 後半はflowの圏がモデル圏になることの説明が書いてある。位相圏ちゃんと触ったことないけどHomが位相空間なのか…Top豊穣圏とかあまり考えたことないな…

 

8.多重ループ空間からオペラッドへ

 ベクトル空間や群環を例にオペラッドが説明されている。一般的に対称モドイダル圏ならオペラッドとその作用を考えられるらしい。オペラッドで代数的構造を一般化したり代数的構造のup to homotopyバージョンなどを考えられるとか色々面白そう。

 

9.ホモトピー的代数

 鎖複体の圏の代数的構造は次数付き微分代数で記述され、そのup to homotopyバージョンがA∞代数らしい。Lie環でも同じようなことを考えたL∞代数ってのもあるらしく面白そう。以前A∞代数知りたくてSGCの数物系のための圏論パラパラ見たけど難しかった印象がある。

 

10.組み合せ論と代数的トポロジー

 1章で軽く書かれていたポセットと複体の関係が圏と関手を用いて説明されている。互いの関手は逆にはなってないが良い関係を持っているらしい。 組み合せ論的代数的トポロジー面白そう。Loose Endにも書いてあるが離散モース理論ってのも関係してるらしい。通常のモース理論は可微分多様体上の関数やベクトル場を扱うが、離散モース理論では、単体的複体やCW複体を扱うらしい。

 

11.超平面配置と有向マトロイド

 有限個のベクトルの間の一次従属性を抽象化した概念であるマトロイドについて書かれている。特異点論に属するのか線形代数に属するのかよく分からない分野。 でもこんなところにもトポロジーが出てきて面白そうだなと感じた。

 

12.トポロジーと工学

 自律走行ロボットの制御とセンサー・ネットワークを例に挙げ、工学への応用について書かれている。オイラー標数を測度と見なして積分するらしい。(マイヤービートレス完全列より有限加法性が従うらしい) 層とも密接に関係するらしいしめっちゃ面白そう。制御と聞くと力学系の安定性が頭に浮かぶ。Loose Endにも書いてあるが、センサー・ネットワークにはPersistent Homologyが関係するらしい。

 

13.ストリング・トポロジー

 数理物理学に起源を持つhomological conformal field theoryに関係するストリング・トポロジーについてお気持ちが書かれている。 ループ空間のホモロジー群は積を持ち、係数環が体の時はそれによりホップ代数になるらしい。これと代数群の研究がホップ代数の起源らしい。

 

14.高次の圏とホモトピー

 位相的場の理論を定式化する高次元圏論について書かれている。 HTT読みたいなぁってなった。 最後に玉木先生のトポロジー像が書かれていて、本の題名にもある言語としてのホモトピー論ということについて説明されている。

 

 この本は厳密な主張や証明を述べるのではなく、イメージを大事にしている本なのでパラパラと読め、たくさんの話題を知ることができた。この本には膨大な量の話題が含まれているため、全てに厳密な証明を与えるのはとても難しいが、興味のあるとこのみ参考文献を参照してみるのが良いと思う。本当に面白い本なので是非手にとってみてほしい。

微分形式とベクトル解析

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 今回は幾何のテスト勉強がてらベクトル解析のgrad、rot、divが微分形式によって理解できることをまとめてみました。

 

 

 この議論はリーマン多様体くらいで一般化できるみたいなのでまた機会があったらその辺もまとめてみたいと思います。

 

 

 次回の月1圏論ゼミは2月10日の予定なのでお時間ある方は是非!

アイレンベルグムーア圏とクライスリ圏

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 今回はアイレンベルグムーア圏とクライスリ圏あたりを復習しました。(12月の月1圏論ゼミの発表を少し改善したものです)

 

 

 私は「代数」の圏と「幾何」の圏の双対について勉強しているのですが、「代数」の圏の一般化の初めの1歩にもなっています。

 

 

 月1圏論ゼミは最初2人でKan拡張知りたいねくらいの軽い気持ちで始めたんですが、規模がどんどん大きくなってきてすごく嬉しいです!

 

 

 次回の月1圏論ゼミは2月10日の予定なのでお時間ある方は是非!

コルモゴロフ商と随伴関手

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 今回はコルモゴロフ空間(T0位相空間)の圏と位相空間の圏の随伴についてまとめました。最近風邪で体調を崩していたので気分転換がてら随伴で遊んでみました笑

 

 私がそんなにしっかり位相空間論をしていなかったのかT0の定義すら知らなかったです。ジェネトポの人とかはこの辺の分離公理の話詳しいんですかね。

 

 次回の月1圏論ゼミは12月15日の予定なのでお時間ある方は是非!